赤煉瓦倶楽部・舞鶴
水野信太郎の赤煉瓦こばなしVol.16
シリーズ「煉瓦と童話」
4、ポーツマスとディケンズと幽霊


 私は1996年の晩春にイギリスのポーツマスを尋ねました。そして、その町を夜半に歩く機会を得たのです。まちに到着した時刻は昼間でしたから、ただ明るい綺麗な所だなあと思っただけでしたが、夜の印象は全く違うのです。いかにも歴史を感じさせる町並みで、ひょっとすると幽霊が出ないとも限らない感じ。細い路地が行き止まりなのかと思うと、直角に折れ曲がっていたりしますが近づくまで見えないのです。煉瓦の住宅のとがった屋根の上には満月が浮かんでいます。ゾクゾクッとしました。
 熱烈な英国ファンのある人の話では、エジンバラにポーツマス以上に古いたたずまいが残っているとのこと。エジンバラを夜中に散歩しようものなら、間違いなくゾクゾク、ゾクーッの連続でしょう。シャーロック・ホームズの作者コナン・ドイルが卒業したのはエジンバラ大学で、ホームズが活躍する舞台に古い煉瓦建築が登場するのも頷けます。
 ポート(港)マウス(入口)を意味するポーツマスは港町で赤煉瓦の建物が数多く残る都市ですが、文学者との縁も浅くありません。ドイルが医師として最初に開業しただけでなく、クリスマス・キャロルの作者として有名なディケンズはポーツマス生まれなのです。
 舞鶴市とポーツマス市が姉妹都市となったのに因んで、ただいま舞鶴市立赤れんが博物館で企画展示が行われています。この11月6日には同博物館の開館満5周年も迎えます。
 それはともかく、ディケンズの”ゾクゾクッ”とする箇所を少しだけ御紹介しましょう。
 そのばんのことです。スクルージじいさんが だんろの ひに
 あたっていると、どこからか きみのわるい おとが ちかづいて
 きました。すると とつぜん、しんだ しごとなかまの マーレイの
 ゆうれいが あらわれたのです。マーレイは くさりにつながれていて、
 あるくと、がちゃがちゃと きみのわるい おとを たてるのです。
 スクルージじいさんは、びっくりして ふるえあがりました。

「ディケンズ原作 クリスマス・キャロル」関谷義樹訳、ドン・ボスコ社より

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