赤煉瓦倶楽部・舞鶴

水野 信太郎の赤煉瓦こばなしVOL.15
シリーズ「煉瓦と童話」
3、 ドイツの黒い森と魔女


 この第1回と2回目で、イギリスとデンマークの童話を紹介しました。次はフランス周辺かなと思って作品を探してみます。するとベルギーの文学者モーリス・メーテルリンクの代表作『青い鳥』がありました。この作品は童話というよりも戯曲つまり演劇のシナリオとして書かれました。しかし読み直した限りでは、煉瓦は登場しません。「金や銀の柱頭で飾られた明るい大理石の柱」という表現があるばかりです。せいぜい「たなのついた暖炉には、燃え残りのまきがまだとろとろともえており」という箇所がある程度でした。きっと暖炉まわりには煉瓦が使われているのでしょうけれども。
 今回はドイツへ飛ぶことにします。ドイツには黒い森があります。そこで思い出されるのは、グリム兄弟の『ヘンゼルとグレーテル』です。この兄弟は深い森を舞台にした伝承的な話を集めて記録しました。ですからグリムに関しては、古い民話を集めて記録しただけだという見方があります。しかし決してそれだけではありません。確かに話のきっかけは昔話にあるかも知れませんが、実はグリム兄弟が作り出した話もたくさんあるのです。
 森の中には白雪姫のように美しい登場人物とともに、悪魔のような魔女も住んでいます。魔女といっても“宅急便のキキ”のように可愛らしい少女ではなく、恐ろしい魔法使いです。そのほか七匹の子やぎを呑み込んだオオカミや赤ずきんちゃんの狼もいるのです。
「中にはいって、パンを入れてもいいように、火がよくまわっているかどうか見るんだよ」と、魔女はいいました。グレーテルが中にはいったら、おばあさんは、かまどのふたをして、この子を焼いて食べてしまうつもりでした。しかし、グレーテルは、おばあさんの考えていることを見ぬいて、いいました。「どういうふうにしたらいいか、わからないわ。どうやってはいるの?」この後はよくご存知ですね。煉瓦は悪の象徴である魔女を焼き殺してしまう、いわば“正義”の建築材料だったのです。
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