赤煉瓦倶楽部・舞鶴

水野信太郎の赤煉瓦こばなしVol.12
シリーズ「煉瓦と類似品」
4.煉瓦とテラコッタ


 「類似品にご注意願います。」の類似品シリーズ最終回は、煉瓦に似て非なるもの‥・テラコッタ(人によってはテラッカタ)です。テラコッタは、テラとコッタという二つの言葉から成り立っています。
 テラは土のことです。住宅の庭先に取り付けられるテラスは、元来が土に接していなければなりません。その点が2階でもよいベランダ(屋根つき)や、2階以上に設けられるバルコニー(屋根なし)などと決定的に違っています。
 つまりテラスは1階にかぎられるもので、玄関前のポーチ(主出入口の踏段)を除く居間、寝室などすべての部屋から直接外へ出る部分の広いステップなのです。 
 一方、テラコッタのコッタは、イタリア語で「焼かれた」を意味します。焼くのではなく焼かれたという表現は過去分詞です。なんだか英語の授業みたいですけれど、現在形の焼くではなくて焼いたという過去形と、何なにされるという受け身の両方をもつ「焼かれた」なのです。
 このように見てきますとテラコッタとは単に、焼き上げられた土製品ということになってしまいます。その限りにおいては煉瓦もタイルも屋根瓦も、みんなテラコッタに含まれてしまいそうです。
 現在の日本でテラコッタという場合には美術史などの分野では土偶などの土人形を、また建築の世界でしたら様式建築の装飾用大型粘土製品を呼びます。たとえばコリント式オーダーの柱頭に載っているアカンサス(葉あざみ)の葉などを石材で刻むのは大変なので、焼き物で造ることは珍しくありません。これなどが代表的なテラコッタなのです。
 基本的にテラコッタには和風意匠のものはないようですね。それもそのはず、古代ギリシアと古代ローマ様式の両方を合わせて古典=クラシックと呼びますが、これらのドリス式・イオニア式・コリント式・トスカナ式・コンポジション式の柱(オーダー)頂上の装飾を土製品で代用したものなのですから。
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