赤煉瓦倶楽部・舞鶴

水野信太郎の赤煉瓦こばなしVol.10
シリーズ「煉瓦と類似品」
2.煉瓦と屋根瓦


 先回お話ししましたタイルは、日本で赤煉瓦を模して発明されたものです。申し訳ない言い方をしますと、タイルは煉瓦のイミテーションとして生み出された品でした。けれども今回の屋根瓦は、わが国では煉瓦の元すなわちオリジナルとなった建築材料です。 
 煉瓦という名前は中国語にも韓国語にも、まったく見当たりません。実は日本語の煉瓦は明治時代の新しい造語で、“瓦”という字が使われていることからも御解りのように、普通よりも厚めの(丈夫な)瓦(土で焼いて造った素材)という程度の意味なのです。わが日本では名称からして、やはり瓦が煉瓦のルーツでした。 
 一方、屋根用の瓦は英語でルーフ・タイルと呼ばれています。ルーフ(屋根)に用いられるタイル(陶磁質の板)という意味です。極めて明快ですね。ですが、この言葉から想像しますと、西洋では瓦はタイルよりも後の時代か、どんなに早くても精々同じ頃に創り出されたように思われます。日干し煉瓦は装飾タイルよりも古くからありましたので、世界的には「煉瓦」の次に「タイル」そして「瓦」の順番で発明されたことになります。 
 タイルの大多数を占める施釉タイルは、残念なことに“時間薬”が掛かりません。いつまでたってもテカテカしていて、時の流れの重みも味わいも感じられません。しかし、いぶし瓦は時間の経過とともに風化して、美しく老いることが出来ます。赤煉瓦もその点は、いぶし瓦に引けを取らないという魅力的な強みがあります。つまり、どちらも素焼きだということです。 
 いぶし瓦は完全に密閉できる窯で焼かれます。空気が不足ぎみの窯内部で窒息状態(還元)で焼成された結果、還元鉄(粘土中の砂鉄が錆びてない状態)の色が黒いぶしになります。赤煉瓦は空気(酸素)が大量に入り込む開放的な窯で、土中の砂鉄が酸化焼成されて赤くなるのです。鉄が酸化すれば赤錆になります。この差が黒と赤色の違いなのです。
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