赤煉瓦倶楽部・舞鶴

水野信太郎の赤煉瓦小ばなしVol.1
シリーズ「煉瓦と地震」 
1、なぜ煉瓦は地震で壊れるの? 

 みなさま新年あけましておめでとうございます。いきなり唐突ですが、まいど馬鹿馬鹿しい煉瓦の小咄(こばなし)を本年から寄稿させていただくことと相成りました。何卒お手やわらかに願い上げます。
 さて第一回目としまして、どのような話題を御届け致しましょうかと考え、ごくロマンチックな内容を用意しておりましたが突然、阪神大震災が発生しましたので、もっと真面目に地震にまつわる情報を取り上げます。
 いよいよ本題に入りますが、煉瓦の建物はどうして地震の時に壊れるのでしょうか。なるほど確かに煉瓦造の建築物や土木構造物は、大地震を受けると少なからぬ被害を被ります。
 ではいったい、どのような理屈(メカニズム)で煉瓦が壊れるのかと問われると、はたと言葉に詰まってしまいます。苦しまぎれに「そんなもの昔から大きな力で壊されるのに決まっているんだ。」とでも言うよりほか良い手が思い付きません。
 事実、この度の兵庫県南部地震でも旧居留地十五番館(被災時はノザワ本社が使用・明治14年竣工)、旧辰馬本家酒造施設(白鹿記念酒造博物館・明治25年〜27年竣工)、下山手カトリック教会(明治43年竣工)、旧三井銀行神戸支店(被災時は第一勧業銀行神戸支店・明治 14年竣工)などの有名煉瓦建築が全壊しました。
 実は、建物が地震で突き崩されるのは、慣性という力によります。慣性の法則というのを学校で習ったことがあるでしょう。運動している物体は動き続けようとし、いま止まっている物はジッとし続けようとするという例のヤツです。この法則を利用してダルマ落としで遊んだり、大工道具のカンナの刃を引っ込めたりすることができるのです。
 それはともかく普通の地震は建物の重さに見合った、ですから大きくて重い建築には大きな力が、反対に小さくて軽いものには少ない力が、横方向からはたらきます。
 地震のとき、最初に揺れるのは大地です。地面は水平方向に運動しますが、その上に建っている建物は止まっていようとします。たとえば地盤と基礎は右へ移動し、逆に地上の構造物はその位置に(相対的には左方向の力で)残ることになります。その結果、建物の左下から斜め右上へ 45度の方向に亀裂が入り、建築物は壊れてしまうのです。
 このメカニズムは木や鉄やコンクリートの建物でも煉瓦の建築でも同じなのですが、もともとバラバラの煉瓦や石やブロックなどを積み上げたものは正直にそのまま45度方向に引き裂かれてしまうのです。
 ただし今回の阪神大震災は直下型地震ですので、横力だけではなくそれ以上に上下動が加わりました。まだ調査を待たねば解りませんが、垂直力が原因で鉄筋コンクリート造の中層ビルの中間階の柱が破壊されたのでしょう。
 下から突き上げられた後、上層の自重が加わったのです。ところが下層の柱はもともと地震時の大きな力に備えて太くつくられています。最上方の柱が一番細いのですが、その部分よりも上の重荷はありません。それに比べて中間階の柱は、上階の荷重がある割りには幾らか細かったのではないでしょうか。
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