ガウディはドアのノブをデザインする時、粘土を使って大まかなかたちをつくり、最後に実際にこれを握って最終的なかたちにするという方法をとっている。サグラダ・ファミリア教会の彫刻はモデルの写真をカメラに納め、それから石膏職人に模型を造らせ、更にこれから原寸の石膏模型を造り設置されるところに仮置きして日夜眺め、またここで手を加えて、やっとのこと石に刻ませるという気の遠くなるようや周到な、そしてほとんど人為的な作業というより、ものが自然に生まれ出てくるような創造のプロセスを踏んでいる。
 ガウディの残したものはドアのノブという建築の部品だけではなく、なによりもこれらを包括するスペースが、名人の手によってつくられた焼き物を見たときの美しさだけでなく、手にしたときに具合がよいように、とても居心地のよいものとなっている。一口にいえば、とても人間臭いものということだろうか。
 れんがはガウディの手になると自由自在にこねられて、一見特異だがいかにも人間臭い空間が作られていったのだ。
カサ・ミラのドアノブ
(レプリカ)

 バルセローナはイベリア半島の北東にある古くから工業の盛んな街で、現在、人口1,635,067人(1993年現在)の活気あるスペイン第二の商工業都市。最近では92年の第25回夏季オリンピックを成し遂げた街でもある。ガウディの生きた今からほぼ百年前の頃は、繊維産業を主軸にして起きた産業革命の息吹と、中央政府からの独立分離のカタルーニャ地方主義の気運が盛んな頃で、勢い余る活気を見せたまさに黄金の時代だった。カタルーニャ語を話し、金髪、碧眼のカタルーニャ人の首都としてバルセローナはガウディだけではなく、ミロ、ピカソをも育てたアヴァンギャルドな街であり、歴史の生きている街でもある。
1995年のバルセローナの街。手前が港、中央はラス・ランブラス通り、その左手はかつての王立造船所。