事例報告
「舞鶴赤煉瓦建造物群調査を終えて」

司会)
 ありがとうございました。次に、記念シンポジウムに移ります。全国各地で煉瓦の調査や、赤煉瓦を生かしたまちづくり、ネットワークづくりに取り組んでおられます4人の方々に事例発表を行っていただきます。
 最初に財団法人日本ナショナルトラスト関西BOX事務局長の岡田実成(みつしげ)氏に「舞鶴赤煉瓦建造物群調査を終えて」と題して発表を行っていただきます。岡田氏は、1948年京都生まれ。現在、株式会社計画工房代表。平安女学院短期大学非常勤講師を務めておられます。16年前、まちづくりコンサルタント会社、計画工房を設立。同時に、日本ナショナルトラスト関西BOXの事務局を運営され、歴史的まちなみ保存、まちづくり、トラスト運動を行っておられます。平成8年度には、舞鶴赤煉瓦建造物群調査を事務局長としてとりまとめておられます。

岡田氏)
 皆さん、こんばんは。ご紹介いただきました日本ナショナルトラストの関西の事務局を担当しております岡田と申します。今日は、時間が15分というふうに聞いておりますので、平成8年度に、舞鶴の赤煉瓦建造物群調査という、日本ナショナルトラストとしての調査、観光資源保護調査といますが、取りまとめました。その内容について今日は、ご報告したいと思います。すでに舞鶴の皆さんですので、ご承知のことを、報告するようなことになると思いますけれど、まとまった成果ということでお聞きいただきたいと存じます。実は財団法人日本ナショナルトラストと申しますのは、設立して30年でございますけれど、運輸省の観光所管の公益法人であります。全国で今まで毎年歴史的資産あるいは自然資産を生かすまちづくりの調査を行っておりまして、すでにこの30年間に200件の調査を行っております。平成8年度は、この舞鶴市で赤煉瓦建造物群調査を行ったわけでございます。調査は、委員長に京都工芸繊維大学の日向先生、舞鶴市のご出身でございますけれど、委員長になっていただきまして、今日出席されておられます水野先生にもご協力いただきまして、そういう諸先生と、いろいろなフィールド調査を重ねまして、調査を行ったわけであります。調査の重点はですね、2つありました。1つはですね、多数残っておりますこの舞鶴の、赤煉瓦建造物の総合調査という形で、調査台帳を、確立しようということであります。それからもう1つは、今馬場さんからもお話がありましたけれど、今後の保存整備のあり方を、トラスト運動的な立場から提言を行うことの2点でありました。
 これらはですね、既に舞鶴でいろいろ取り組んでおられました、建築探偵団とかそれから赤煉瓦倶楽部の成果とかですね、それらがあって初めて出来たものでございまして、単に1年の調査で出来上がったものではありません。それと、舞鶴でそれらの調査に関わっておられた渡辺祐次さんの協力を得まして、残念ながらお亡くなりになりましたけれど、その最後の仕事としてまとまったものでございます。
 それではですね、赤煉瓦建造物群調査の基礎台帳ということで、舞鶴にどれだけの赤煉瓦の建造物があるかということを調査したわけでありますけれど、その概要からご報告させていただきます。舞鶴は、北吸の倉庫群とかが一番有名と言えば有名なんでありますけれど、実は総数で、その調査台帳に載りましたのは、114件ありました。その内訳は、建築物が60棟、工作物関係が50棟、その他が4件と言うようなことでありました。用途的なことで申しますと、倉庫として利用されている建物が27棟、それから工場が18棟ということで、現存して稼働しております。それから鉄道関係では、橋梁が実に22件、隧道、いわゆるトンネルが4件、砲台跡5件、水道配水池1件、貯水池1件と、その他に門柱とか、手洗所とか敷石とか、いわゆる赤煉瓦が使われている物はですね、ちょっとでも使われている物まで網羅した訳であります。もちろん、神崎のホフマン窯もその中に含まれているわけです。実に非常に用途が豊富で、かつ多くあることが判ったわけであります。そして、建設年度で申しますと、明治の33年から37年に集中しております。全国的にも非常に早い時期で、特に舞鶴の場合は、ご承知のように海軍工廠という形でも出来あがってきてましたので、それが大体36年位が16棟とかですね、それから鉄道は明治37年建設でありますので、その時にほとんどが出来ております。その後もですね、もちろん赤煉瓦建造物の建設が続いておりまして、大正に16、昭和・戦前で16、戦後も5件数えられたと言うことであります。実は全国的にもですね、こういうふうに調査台帳として、ひとつの赤煉瓦建造物物群とかが、まとまって調査されているところは、非常に稀であります。ほとんど無いと言ってもいいくらいです。そういう意味では非常に貴重な成果になったんじゃないかというふうに考えています。
 舞鶴の赤煉瓦建造物群の、意義と特徴ということで申しますと、いろいろ調査した結果、やはり一番なのは質と量が非常に豊かであるということです。それは、総合性と多様性と申しますか、まとまって存在すると、結局、建物群としてですね、海軍工廠、それから配水池と貯水池とかですね、そういう形でまとまって存在するということが、非常に大きなことであります。ちなみに、今、ナショナルトラストの今年度の調査で、大阪の泉南郡の熊取町という所の旧綿布工場の調査と活性化の方策をやっているんですけれど、大阪の泉南郡のあたりは非常に綿布工場とかが多かったわけですけれど、いろんな訳で無くなってきております。熊取町という管内でいきますと、ほとんどそこだけという形になっているんですけれど、舞鶴の場合はですね、そういう意味では出来あがつた当時の工場あるいは海軍工廠とかが、ほとんど残る形で引き継がれているというふうな総合性があるということが、非常に特徴として判っております。それと、いろんな多様性、普通は煉瓦の建造物というと倉庫・工場というのが代表的なものでございますが、その他に、土木構造物がたくさんございます。それらが、結局生きて使われているというのも特徴かと思います。それから、エリアの分布としましても、北吸に象徴されますように中枢部に分布して残存しているということで、今後の活用といった面でも可能性を非常に秘めているということが言えると思います。それとですね、生活に非常に密着していると申しますか、いわゆる114件と言いましたけれど、その内現在実際に使われているというのがほとんどでございます。いわゆる日立の工場とか、自衛隊の総監部とかもそうですけれど、ほとんどが実際にまだ使われていると、鉄道もそうです。もちろん、ちょっと高架とかになって、変わってきておりますけれど、隧道とか当然残ってきておりますし、今使われている、そういったものが、多いというのも特徴となっております。それからですね、調査台帳を整理しておりまして、もう1つは発生の歴史と申しますか、軍の鎮守府の開庁から始まります要衝としての建設の歴史があったということで、いろいろ構造の専門の先生にも見ていただいたんですけれど、非常に技術的に高度なものとして建設されているというのが、1つの大きな特徴でもあります。ですから、実際それだけ今も使われて残っているという風なことになろうかと思うんですけれど、その意味では非常に技術水準が高い物が揃っているということであります。それとともにですね、軍関係の関連もありまして、設立からの設計図とか、配置図とかそういう文献資料が、非常に豊富であるということも大きな特徴になっております。調査台帳はそういうことで、非常に貴重な成果として現在まとまっているということが言えるんではないかと思います。
 次にですね、保存活用の基本方向をいろいろ討議をしていきました。これはいろんな議論を呼んだ訳でございますけれど、ナショナルトラストの調査団の提言としましては、一番大きな方向としては、「赤煉瓦の地域博物館」いわゆる「フィールド・ミュージアム」構想の中に位置づけていいんじゃないかと思います。それはどういうことかと申しますと、今使われている建物が非常に多いということです。それだけ、総合性と多様性を含んでいると言うこともありましてそれぞれの置かれた現状をですね、すべて何かに転用して活用するとか、そうじゃなくて、今の現状を尊重しながら、その暮らしとか生産活動の中で地域この舞鶴市全体を位置づけた、地域博物館的な物になればいいんではないかということでございます。基本方針としましては、いくつかの提言は行ったわけでございますけれど、その中でこれだけのたくさん赤煉瓦の建造物が残っていると、これをですね、どこかを保存してどこかは無くなってもいいんじゃないかというのは、やはり、やめた方がいいんじゃないかというふうなことが1つありました。基本的にもちろん無くなっていく流れというのもあるんですけれど、出来るだけ全的にですね、保存の努力をしていくべきでないかと、それと、ちょっと反対、逆転する事を言うかもしれませんけれど、無理なく暮らしの中で位置づける必要があると言うことです。それともう1つは、市長さんの話の中にもありましたけれど、やはり、舞鶴市のまちづくりの中で今日お集まりの皆さんと同じように、市民と共に考えていくというふうなことが、これからのまちづくりで一番大切なことではないかと言うことが、提言の柱になっております。
 いくつかの提言はですね、今日の中に概要と言う資料が入っておりますけれど、いくつかの提言をやっているわけですけれど、一番大切でないかと言うことを申し上げますけれど、それは保存物件をいかに担保していくか、守っていく方策をどう組み立てるかということでございました。せっかくですね、そういうふうに調査台帳として赤煉瓦の建造物・工作物がすべてリストアップされたということで、これをですね、何らかのそういうまちづくりの条例、要綱等の中で、登録みたいな活用ができないかと、文化財の文化庁の方での文化財登録制度がありますけれど、イギリスとかそういう所では、一番大事なことはリスティングであります。やはりリスティングをやった中できっちりと登録として位置づけて、それに対する改変に対する届け出制とかですね、市民みんなで見守っていくということが一番大事なことではないかということが話されました。その他にいくつかの提言を行っていますけれど、とても15分じゃ出来ないと言うことがわかりました。あとですね、せっかく調査の報告書が出来上がっておりますので、ぜひ見ていただきたいと思います。
 販売もしておりますのでよろしくお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。

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